ドラログ:海外ドラマのアレコレをご紹介するブログ

海外ドラマファン的正しいトニー賞の楽しみ方まとめ

|ガイド

海外ドラマファンにとって権威のある大きな賞というと、まず思い浮かぶのがテレビ業界最大の賞である「エミー賞」。次に映画賞の最高峰「アカデミー賞」が気になるところだ。でも、アメリカには忘れちゃいけない大事なアワードがもう1つある。それは演劇&ミュージカル業界の「トニー賞」。アカデミー賞に比べると日本での注目度は今ひとつだけど、実はテレビで見たあの顔や後にドラマで活躍することになるフレッシュなスターがわんさか登場するドラマファン涎垂のイベントなのだ。
そこで今回は第70回トニー賞をドラマファン目線から徹底解説したい。

そもそも「トニー賞」ってどんな賞?

ここ最近は海外ドラマでお馴染みWOWOWで生中継しちゃって、日本でも結構盛り上げられてる「トニー賞」。「トニーって一体誰よ」って思ってなかった? お教えしよう。トニーとは、1946年に58歳の若さで亡くなったブロードウェイ女優=アントワネット・ペリーのことなのだ。日本人的には馴染みがないが、アントワネットの愛称はトニーなんだとか。
このトニーさんはアメリカン・シアター・ウィングという劇場組織の創設者でもあって、ブロードウェイの中でも特に人望の厚い人だったらしい。でもって彼女の死を悼んだ劇場関係者たちが何か記念になること始めようぜってことで創設された賞がトニー賞なのだ。今では演劇部門とミュージカル部門合わせて30部門が表彰される、アメリカ演劇界になくてはならないアワードとなっている。
そして今年、1947年から始まったトニー賞は70回目を迎えた。そんな記念の年なのに、ここ20年ほど使われているラジオシティ・ミュージックホールの半分くらいしか入れないビーコン・シアターでの開催となってあらびっくり。一般向けのチケット発売もなく、演劇ファンたちにはなんだかなあ……だったのだ。ちなみに関係者向けのチケットのお値段は一番後ろのお席でも$295、ノミネートされた人々が座る1・2階席は$1750とかなりのお値段。それでもアカデミー賞よりはだいぶお安いんだとさ。

毎年注目の司会者、今年はカラオケのあの人

式典の盛り上げ役といえば司会者。しかもトニー賞の場合は演劇・ミュージカル関連ということで、過去のトニー賞ノミネート歴に加えてパフォーマンス力や演技力が求められるという非常〜にハードルの高いお役目なのだ。歴代司会者の顔ぶれを見ても、『新スタートレック』ウーピー・ゴールドバーグ、『グッド・ワイフ』アラン・カミング、『ウルヴァリン』ヒュー・ジャックマン……とまあそうそうたる顔ぶれが並んでいる。『天才少年ドギー・ハウザー』ニール・パトリック・ハリスに至ってはそのパフォーマンス力を見込まれて4回も司会を務めているのだ。これはもはやトニー賞レギュラー! そんなニールはもちろん今年もゲストとしてお呼ばれしてたぞ。
ということで毎年大注目のトニー賞司会者、今年白羽の矢が立ったのはジェームズ・コーデン! そう、映画『ワンチャンス』でポール・ポッツ役を演じたあのおじさんだ。アメリカではCBS深夜のトーク・バラエティ番組『ザ・レイト・レイト・ショー・ウィズ・ジェームズ・コーデン』が人気沸騰中。中でもゲスト・セレブと一緒にドライブしながら大熱唱する「カープール・カラオケ」が超おもしろいと評判なのだ。日本でもAXNで放送中なので意外に知られているかもしれない。
そのジェームズ・コーデン、ただのぽっちゃりおじさんと侮るなかれ。実は『One Man, Two Guvnors』で2012年のトニー賞演劇主演男優賞に輝く実力派アクターなのであ〜る。
授賞式ではそのコメディアンぶりも全力で発揮して、オープニングから最優秀作品候補の『ハミルトン』パロディでブッ飛ばし、予想通りの「カープール・カラオケ」ブロードウェイ・バージョン(いつものはLA走ってるからね)で客席をノックアウト!一人ミュージカル・ダイジェストも披露して『ライオンキング』から『オペラ座の怪人』まで早変わりで笑いを取りつつ演じ切った。それにしても一瞬とはいえおじさんが演じる『アニー』って……いやあ、芸達者ですなあ。

ミュージカル主演男優賞は『SMASH』でおなじみのあの方!

第70回トニー賞の目玉といえばとにかく大人気の『ハミルトン』がどれだけ賞を獲得するかということ。何しろノミネートされたのは史上最多の16個! アメリカ建国時代に実在した人物ハミルトンを描いた歴史ミュージカルが 一体全体何でそんなに人気なのさ、というわけで簡単にご説明しよう。
ものすご〜くざっくり言うと、「日本でいうと新撰組のミュージカルをヒップでホップな感じに仕上げてラップで歌っちゃいました」って感じっす。しかも白人主義の時代なのに出演者はヒスパニックや黒人が中心。これぞダイバーシティというわけで、普段はミュージカルなんか見ない人たちも巻き込んで社会現象になっちゃってるのだ。何しろ作品紹介にはオバマ大統領夫妻がVTRで登場してるんだから、ちょっとずるくない?
そんな中海外ドラマファン的にとっても嬉しかったのは、『ハミルトン』で主演男優賞を受賞したレズリー・オドム・Jr。そう、『SMASH』でアイヴィーの親友でゲイのダンサー=サムを演じていた彼だ。ドラマでは脇役の経験しかなかったレスリーだが、今回の受賞で一気に知名度を上げたことは間違いない。
ちなみに『SMASH』関連では、演劇助演女優賞にアイヴィー役メーガン・ヒルティもノミネートされていた。実はこの二人、カーネギー・メロン大学で1学年違いだったんだそう。随分長いお付き合いですなあ。

ノミニーにはあんな人やこんな人が!

残念ながら受賞を逃した人の中にも、ドラマや映画で見た顔ぶれが並んでいた。
ミュージカル主演男優賞には『CHUCK』『HEROES REBORN/ヒーローズ・リボーン』主演のザッカリー・リーヴァイが『シー・ラヴズ・ミー』でノミネートされた。
『ハミルトン』でノミネートされたもう一人の主演俳優リン=マヌエル・ミランダ(脚本賞&楽曲賞は受賞!)は、新作映画『メアリーポピンズ』で新キャラクター“ランプライター”のジャックを演じることが決まっている。
演劇賞には『ニュースルーム』のジェフ・ダニエルズや『マリリン 7日間の恋』のミシェル・ウィリアムズ、『それでも夜は明ける』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のルピタ・ニョンゴらがノミネートされた。いやあ、皆さん意外と舞台に立ってらっしゃるんだなあ。

プレゼンターはドラマで見た顔のオンパレード

授賞式といえば豪華なプレセンターが付きもの。今回も見事な顔ぶれとなった。
『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』のルーシー・リュー、『ゴシップガール』トリップ役のアーロン・トヴェイト、『GIRLS/ガールズ』イライジャ役のアンドリュー・ラネルズ、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のウゾ・アドゥーバ、『ウィル&グレイス』のショーン・ヘイズ、『SMASH』『アグリー・ベティ』のバーナデット・ピーターズ、『ママと恋に落ちるまで』のバーニー様ニール・パトリック・ハリス、『ダメージ』のグレン・クローズ、『プライベート・プラクティス』ナオミ役で知られるオードラ・マクドナルドなどなど。
「なあんだみんなテレビ俳優じゃん」と思ったあなた、まだまだ甘いですなあ。実はこの方々それぞれブロードウェイで輝かしい実績をお持ちなのであ〜る。グレン・クローズは3回、オードラ・マクドナルドに至ってはなんと6回もトニー賞を受賞しているというもはや殿堂入り的なブロードウェイ偉人なのだ。テレビで知ってる顔ぶれを生で見られるって、やっぱブロードウェイすんごいな。
その他に登場した有名どころのプレゼンターは、『HOMELAND』のクレア・デインズ。クレアは今年オフブロードウェイで初舞台に挑戦したので、そのご褒美ってことかな。そして『ジ・アメリカンズ』主演のケリー・ラッセル、彼女が映画版で主演を務めた『ウェイトレス』がミュージカル作品賞にノミネートされている関係で呼ばれた模様。2000年くらいから復活してきたダイアン・レインや元祖ラブコメの女王メグ・ライアン、そして最後にはアメリカ・エンタメ界の至宝バーブラ・ストライザンドが登場して、スタンディング・オベイションの嵐となったのだった。はあ、すごい!

ブロードウェイは『LAW & ORDER/ロー・アンド・オーダー』祭!

今年の授賞式で海外ドラマファンが最も盛り上がった場面は、間違いなく「『LAW & ORDER/ロー・アンド・オーダー』にこの人も出てましたコーナー」だろう。もともとニューヨークで撮影&ロケーションをしているドラマは舞台俳優がちょくちょく1話ゲスト出演していることで知られている。なぜかというとブロードウェイに出演しながら、テレビの仕事も両立できるから。その筆頭格が『LAW & ORDER/ロー・アンド・オーダー』なのだ。
今回ジェームズ・コーディンがユーモアたっぷりに紹介したのは、プレゼンターとして出席していたクレア・デインズ、『キンキーブーツ』でミュージカル主演男優賞受賞歴のあるビリー・ポーター、『ボードウォーク・エンパイア』のマイケル・シャノン。『ハミルトン』で助演男優賞受賞のダヴィード・ディグスはなんと主演男優賞受賞のレスリーと同じ場面で共演していたところをピックアップされた。こういうのドラマファン的には堪らんのよねえ。トニー賞の構成作家はかなりのドラマ・ファンとお見受けしましたぞ。
そして会場の笑いを最も誘ったのは、『屋根の上のヴァイオリン弾き』で主演男優賞にノミネートされたダニー・バースタインの『LAW & ORDER/ロー・アンド・オーダー』6変化!ダニーの毛量の変化とともに『LAW & ORDER/ロー・アンド・オーダー』の歴史も感じられる趣のあるひと時となったのだった(笑)。
授賞式中に映像で紹介されたのは以上の面々だったが、実は『LAW & ORDER/ロー・アンド・オーダー』シリーズに出ていたゲストはこんなもんじゃあない。プレゼンターとして登場した『ダーティ・セクシー・マネー』ブレア・アンダーウッド、ミュージカル女優のニッキ・M・ジェームス、『Lの世界』ジョディ役のマーリー・マトリン、4回もトニー賞を受賞し『ジ・アメリカンズ』ガブリエル役や映画『フロスト/ニクソン』ニクソン役で知られるおじいちゃんフランク・ランジェラ、『ザ・ヒューマンズ』で演劇助演女優賞を獲ったジェイン・ハウディシェル。そして前出のオードラ・マクドナルドも……
いやはや、これはもう『LAW & ORDER/ロー・アンド・オーダー』に出たことがないブロードウェイ俳優を探す方が大変な気がしてきたなあ。もう一度全シリーズ隅から隅まで見直したくなってきたぞ。

おわりに

以上、ドラマ好きの視点から見るトニー賞もなかなか面白いことがお分かりいただけただろうか。意外な人が実は舞台出身だったり、アッと驚くスターが舞台出演していたりするのがブロードウェイ。有名になってからの「ジャック・バウアー」キーファー・サザーランドや「ハリー・ポッター」ダニエル・ラドクリフなんかも数ヶ月のブロードウェイ出演を果たしているのだ。ゴージャス!
ブロードウェイの劇場は普通に出待ちができるようになっていて、たいていの出演者はサインや写真撮影に気軽に応じてくれる。ドラマで目をつけたあの俳優が舞台出演!な〜んていう暁にはニューヨークまでひとっ飛びして見るのもいいかもよ。

この記事をいいねと思ったらシェア

関連記事

この記事を書いた人

DRACO(ドラコ)をフォローして最新情報をチェック!

閉じる

ログイン

ログインしてお気に入り登録やコメント投稿をしよう。

アカウントを作成する場合は、DRACO の利用規約プライバシーポリシーに同意したものとみなします。

  • ※ DRACOは無料でご利用頂けます。
  • ※ Facebook、Twitterに自動投稿されることはありません。